「心」は階層構造になっている
「心」は自分でもなかなかコントロールし難いものだ。
健康に良くないので少食にしたいと思ってもついつい食べてしまうし、友達と仲良くしたいと思っているのに喧嘩になってしまう。
「自分の心」なのにどうして上手くいかないのだろうか。 「心」は複雑な働きをしているので、自分の意思に関係なく自動的に動いているものだ。
「心」は意識の動きである。
深層心理学では心の構造を次のように4つの階層にわけている。
1 顕在意識 「表面意識」ともただの「意識」とも表現している。私たちが日頃意識している「意識」である。 フロイドは、その意識の下層に「無意識」という「意識」があることを発見した。 「無意識は」文字とおり意識しているという自覚がないので気づかなかったのだ。
2 個人的無意識 「個人的無意識」は、個人が生まれたから今日までの体験や思い出が蓄積されて出来上がっている。 あくまで、その人個人の「無意識」である。
3 集合的無意識 「集合的無意識」は、個人の体験や思い出などの記憶を超えて、全人類共通の無意識である。
全人類が心の奥底でみんな繋がっているというわけだ。 全世界に共通の神話が存在していることをヒントに、ユングは全人類が一魂となった「集合的無意識」の存在を提唱した。 人類の誕生から今日までの一大データベースのようなものだ。 コンピュータで例えれば、個人の意識がつながっているクラウド機能のようなものだ。
4 宇宙意識 「宇宙意識」は、人類だけでなく植物も鉱物も天体も、宇宙大生命のすべてにつながっている意識である。 全宇宙のデータベースのようなものだ。 古代からいわれているアカシックレコードのようなものである。
この4つのわけ方を仏教では、「唯識(ゆいしき)」という考え方の中で展開されている。
「唯識(ゆいしき)」の考え方では「眼・耳・鼻・舌・身」という五識と「意識」を加えた六識の下に、第七識「末那(まな)識」と第八識「阿頼耶(あらや)識」という2階層の無意識の存在を説いている。
第八識の「阿頼耶(あらや)識」は、「宇宙意識」に該当すると解釈できる。 また、神道では人間の心は、神(天)と繋がる一霊「直霊」(なおひ)と四つの魂(荒魂・和魂・幸魂・奇魂)から成り立つという考え方があり、一霊四魂(いちれいしこん)と呼んでいる。
古来から人間は、何階層にもなっている無意識の奥にたどり着くために「瞑想」を実践してきたといえる。
神(宇宙)と一体になろうと数々の行をしてきたというわけだ。